“3歳未勝利”のままで「夏競馬」が終わってしまった競走馬の生きる道

競馬に関する事

「夏競馬」の閉幕と共に、3歳未勝利戦が終了

既にオープン馬となっている多くの競走馬にとって、夏は休養の季節とも言えます。

オープン入りしていない条件馬たちにとっての夏は、勝利して次のクラスに昇格するか、収得賞金を加算させたい時期となります。

条件馬の中でも、一番厳しい状況にいる競走馬がいます。競走で勝利したことのない「3歳未勝利馬」です。

秋以降は、3歳未勝利馬が出走できる競走が限られ、“不利な環境”になっていきます。

 

2023年現在、「サラブレッドの年間生産数は約7000頭」と言われています。

そして、年間に開催される「新馬戦」と「未勝利戦」の約1400競走と言われています。

約7000頭のサラブレッド全て競走馬になれるわけではありませんが、単純に考えると7000頭のうち1勝もできない競走馬が発生してしまうのです。

1400/7000=0.2

20%…、5頭に1頭しか勝ち上がれない計算になります。

1勝することの大変さが良く分かります。

 

勝ち上がれなければ、中央競馬では生き残れない

さて、2023年9月1週目の競馬が終わり、「夏競馬」が終わりました。

「夏競馬」が終わるまでに勝ち上がることが出来なかった3歳未勝利馬の馬主は選択を迫られます。

 

①格上挑戦で1勝クラスの平地競走に出走する。
②障害競走馬に転向して障害競走に出走する。
③地方競馬に移籍する。移籍先で活躍して中央競馬に戻る。
④競走馬としての登録を抹消して、種牡馬、繁殖牝馬、乗馬などに転用する。

 

馬主が「中央競馬に残しておきたい」と考えても、競走馬を預かれる馬房数に上限がある調教師にとって、①と②は悩みの種となります。

馬房を確保しつつ、障害競走馬に調教及び騎乗してくれる騎手を確保しなければいけないことを考えると、②も調教師にとっては悩みの種です。

③と④の決断は馬主の考え次第だと言えます。

 

格上挑戦で1勝クラスの平地競走に出走する

まず夏競馬が終わると、3歳未勝利戦が終了となります。
これにより、3歳未勝利馬が出走できる競走は「3歳以上1勝クラス」の競走になります。

未勝利馬が1勝クラスの競走に出走した場合、その出走を「格上挑戦」と言います。

格上挑戦の1勝クラスで勝利すれば、「1勝馬」になり、再度、1勝クラスに出走できるようになります。
また2勝クラスに「格上挑戦」することも可能になります。

ただし、「3歳未勝利で夏を終えてしまった=稼げなかった馬」ということになります。
今まで稼げなかった馬が急に稼げるようになるとは考えにくいですよね。

「格上挑戦」が出来たとしても、勝負となると厳しい現実と向き合うことになります。

 

競走馬がレースで賞金を獲得すると、その賞金の10%が調教師に、5%が厩務員に分配される決まりになっています。この分配されるお金を「進上金」と言います。(騎手も5%の進上金が受け取れます)

稼げない馬を預かっていても進上金を期待できません。それならば、新規に競走馬を預かり、その競走馬に期待した方が効率的です。
競走馬を預かれる馬房数が限られているが故の悩みですかね。

「馬主から預託料を貰えるのなら、進上金が入ってこなくても良い」と考える調教師もいるかもしれません。
それに関しては、調教師の考え方の違いや、厩舎の経営状況によって変わるのかもしれません。

 

障害競走馬に転向する

②の障害馬転向に関しては少し事情が異なります。
障害馬の調教に関しては、調教師よりも騎手の権限が大きくなるからです。
「調教から騎手が馬を作り上げていく」と言われるほどです。

平地競走よりも障害競走の方が調教手当や騎乗手当が高く、進上金は7%になります。

馬房を確保しつつ、障害競走馬に調教及び騎乗してくれる騎手を確保しなければいけないことを考えると、②も調教師にとっては悩みの種です。

 

地方競馬に移籍する

③地方競馬に移籍するのも簡単ではありません。
どこの地方競馬に移籍させるのか?どの調教師が預かってくれるのか?
地方競馬で実績を作って中央競馬に戻ってこられるのか?

地方競馬に移籍させるかどうかは、馬主の悩みですね。

中央競馬から地方競馬に移籍した場合は、3歳であれば2勝、4歳以上であれば3勝が“出戻り”の目安となります。

 

競走馬登録を抹消して、繁殖に上がるか、乗馬などに転用する

④競走馬としての登録を抹消して、種牡馬、繫殖牝馬、乗馬などに転用する。
全てのサラブレッドが繁殖入りできる訳ではありません。

競走馬として走っていたサラブレッドが乗馬になるためには、乗馬トレーニングが必要になります。牡馬なら去勢手術を行ったうえで乗馬トレーニングを受けさせることになります。

セラピーホースや観光用馬として生きる道もありますが、それも狭き道です。

中央競馬に残るサラブレッドもいれば、中央競馬から去るサラブレッドもいます。

「夏の暑い時期に何で連闘をさせるんだ?」という疑問を抱いた方に私は「3歳の夏までに未勝利を脱出しないと中央競馬では生き残れないから」と答えるようにしています。

秋競馬は楽しみですが、勝ち上がれなかったサラブレッドのことを考えると複雑な心境になります。

それでも私は、これまでと同じように競馬を楽しむのでしょう。



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