競馬の世界は階級社会!本賞金と収得賞金について【解説】

競馬に関する事

落語の世界は階級制度で、最初は「前座見習い」から始まります。

「前座見習い」は師匠のもとで修業する期間で、“落語家の卵”のようなものです。

師匠と共に行動し、落語家としての基礎を学ぶ期間です。

師匠から許可が貰えると「前座」となり、人前で落語を披露することができるようになります。

この前座期間は修業中の身なので、師匠以外の寄席に出演する目上の人への気配りや、雑用などをこなさなければいけません。

 

「二ツ目」になると羽織を着用できるようになり、前座のような気配りや雑用をしなくてもよくなります。

ただし、二ツ目になると、自分で仕事を取って来り、真打昇進への稽古を続けなければいけません。

師匠のもとから少し離れて、自分の芸を磨く期間になります。

 

そして最上級位の「真打」に昇進すると、弟子をとることができるようになります。

寄席でも一番人が入る時間に演目を披露できるようになり、世間の注目度も一気に上がります。

しかし。「真打昇進が落語家のゴールではない」と私は考えています。

「“大名跡”を継ぐ」…過去の偉大な落語家の名を継ぐという役目に挑んでこそ、真打だと思っています。

 

さて今回は、「競走馬の階級社会と、本賞金と収得賞金」に関する記事を作成していきたいと思います。

 

競走馬たちの階級社会

落語の世界と同じように、競馬の世界も階級社会です。

そして、全てのサラブレッドが「競走馬」になれるわけではありません。

競走馬としての能力がないと競走馬として登録されず、競馬の世界で走ることができません。

また競走馬として走っていても、競走能力を失ったり、出走できる番組が無くなると競走馬としての登録を抹消するしかありません。

競走馬として登録されないと競馬で走ることができません。

 

「競走馬」として登録されると、競馬で走れるようになる

競走馬となったら、「新馬」という扱いになります。

「新馬」という扱いを受けるのはデビュー戦までです。

デビュー戦で勝利すれば昇格となりますが、デビューで負けてしまうと「未勝利馬」という扱いになります。

「未勝利馬」は未勝利戦で勝たないと昇格できません。

また未勝利戦には競馬未出走の「新馬」も出走できるので、勝ち上がりの争いは激化していきます。

「まずは1勝すること」が大切です。

 

「新馬・未勝利」戦で勝利すると、その競走馬の年齢に応じて「1勝クラス」「2勝クラス」「3勝クラス」「オープンクラス」というようにクラス分けが細分化されていきます。

そして、その呼称も「新馬」「未勝利馬」「1勝馬」「2勝馬」「3勝馬」「オープン馬」と変わっていきます。

 

オープン馬になるための目安は、以下の通りです。

2歳及び3歳春まで
2勝または収得賞金501万円以上

3歳夏以降
4勝または収得賞金1600万円以上

 

「新馬・未勝利」~「3勝クラス」にいる競走馬は、出走できる限られているので、「条件馬」と呼ばれています。

「オープン馬以外は『条件馬』」となります。

 

「新馬・未勝利」を勝ったあとに、もう一度そのクラスの競走に出走することはできなくなります。

「1勝クラス」~「3勝クラス」までも基本的には同様で、一度そのクラスで勝利すると、そのクラスの競走には出走できなくなります。

※格上挑戦で勝利した場合は、次回から自己条件となるのでもう一度出走できます。

 

「オープンクラス」は最上位クラスなので、何度勝利しても「オープンクラス」のままです。

オープン馬になって重賞競走で勝利することで、競走馬としての栄光を掴むことになります。

 

本賞金と収得賞金の違い

競走馬が獲得した収得賞金の金額によってクラス分けが行われます。

競馬の世界には「本賞金」「収得賞金」という賞金があります。

本賞金とは?

本賞金は、その競走で1着から5着までに入着した競走馬が獲得できる賞金です。

1着馬は設定賞金の100%を獲得することができ、2着馬は40%、3着馬は25%、4着馬は15%、5着馬は10%といった具合に獲得できる賞金が異なります。

去年2022年の有馬記念の本賞金を振り返ってみましょう。

  1. 4億円       …100%
  2. 1億6000万円    …40%
  3. 1億円       …25%
  4. 6000万円    …15%
  5. 4000万円    …10%

先ほど紹介した割合になっていますね。

この本賞金が馬主や調教師の収益となります。

 

※この本賞金以外にも「出走奨励金」や「特別出走当て」などの賞金がありますが、今回は省略いたします。

 

収得賞金とは?

収得賞金とは、競走馬の強さを区別するための賞金額です。

私は<収得賞金が多い馬≒強い馬>と考えています。

 

次に収得賞金によるクラス分けは上記の通りとなります。

  • 1勝クラス…収得賞金が500万円以下
  • 2勝クラス…501万円以上1000万未満
  • 3勝クラス…1001万円から1600万円未満
  • オープンクラス…1600万円以上

収得賞金の多少によって出走できるレースが限られてきます。

基本的にオープンクラス入りしていないと、レースの格付けが高い重賞競走に出走できません。

 

収得賞金の重要性

オープン馬になると出走できる競走は「特別競走」と呼ばれてます。

レースの格としては、上からGⅠ、GⅡ、GⅢの重賞競走があり、その下にリステッド競走、オープン特別競走があります。

条件馬でもオープンクラス競走に出走できる場合もあります。その場合は「格上挑戦」と言います。

格付けの高いレースに出走するためには、収得賞金の金額が重要になってきます。

 

収得賞金で決まる出走馬の例…

出走可能頭数16頭に対し、18頭の出走登録があったとします。

まずは出走登録してきた18頭のなかに「優先出走権」を持つ競走馬がいたら、その馬が優先して「出走できる馬」として登録されていきます。

次に、収得賞金が多い競走馬から「出走できる馬」として登録されていきます。

「優先出走権」と収得賞金の多少で14頭の出走が決まりました。

残りの出走登録馬4頭のうち、3頭が同じ収得賞金だった場合は、その3頭の中から出走できる2頭を抽選で選出することになります。

抽選で外れてしまうと、その馬は「非当選馬」となります。

これで出走する16頭が決まりました。

 

競走馬としてレースに出走したければ、そのレースごとの優先出走権を持っていることが大切ですし、優先出走権を持っていなくても、収得賞金が高ければ高いほど、抽選の対象になる確率は低くなります。

このことからも、「収得賞金の加算が重要である」と言えます。

 

収得賞金の加算条件と加算額

では次に、収得賞金の加算条件を見ていきましょう。

全体的な加算額は上記のメモのとおりです。

このメモでは見づらいので、清書しました。

条件クラスの収得賞金

条件クラスの収得賞金の加算から見ていきましょう。

新馬・未勝利戦を勝つと収得賞金が400万円加算されます。
そして1勝クラスを勝つと500万円、2勝クラスを勝つと600万円、3勝クラスを勝つと900万円が収得賞金として加算されます。

2歳馬・オープン競走の収得賞金

次に、2歳馬のオープン競走での収得賞金の加算を見ていきましょう。

リステッド競走で勝利すると800万円、九州産馬限定競走では500万円、それ以外のオープン競走では600万円が収得賞金として加算されます。

3歳馬・オープン競走の収得賞金

3歳馬のオープンクラスのリステッド競走を勝利すると1200万円、それ以外の競走では1000万円が収得賞金として加算されます。

リステッド競走は“準重賞競走”という考え方で良いと思います。

3歳及び4歳以上のオープン競走の収得賞金

3歳・4歳以上のオープンクラスのリステッド競走を勝利すると1400万円、それ以外の競走では1200万円が収得賞金として加算されます。

2歳馬・重賞競走での収得賞金

 

条件クラスとオープン競走では勝利馬にしか収得賞金は加算されませんでしたが、重賞競走では2着馬にも収得賞金が加算されます。

2歳馬の重賞競走では、以下のとおりになります。
GⅠ・GⅡ競走の1、2着馬には、本賞金の半分の金額が収得賞金として加算されます。
GⅢ競走では1着馬には1600万円、2着馬には600万円の収得賞金が加算されることになっています。

3歳及び4歳以上の重賞競走での収得賞金

そして、3歳及び4歳以上の重賞競走での1、2着馬には、本賞金の半額が収得賞金として加算されます。

2022年の有馬記念の勝ち馬であるイクイノックスは新馬戦で勝利後は、GⅡ以上の重賞競走で2着以上の成績を残しています。
そのため、獲得賞金約8億円に対し、収得賞金は約4億円となっています。
本賞金の半分が収得賞金として加算されていますね。

 

収得賞金加算をめぐる戦略

収得賞金を加算したい競走馬にとっては、「3着に入れるかどうか」というGⅡ競走に出走するよりも、「2着以内は堅い」というGⅢ競走に出走した方が戦略的には正しいのかもしれません。
ただはっきりしている点があります。
“収得賞金の加算”だけで考えると、「GⅡ競走で3着よりも、GⅢ競走で2着の方が価値がある」という点です。

 

優勝劣敗の世界であるサラブレッドの世界では、勝たなければ生き残ることはできません。

ただナイスネイチャやステイゴールドのように、GⅠ競走で複数回2着や3着に入着する競走馬は、本賞金を獲得してきてくれるので、“馬主孝行”な競走馬なのです。

4月になると春競馬になり、日本ダービーを代表とするクラシック競走が始まります。

競馬に携わる人たちはクラシック競走制覇を目標に競走馬を仕上げてきますが、収得賞金が不足していると出走することが厳しくなります。

どんなに能力を持った競走馬でも競走に出走できなければ、話になりません。

現3歳の冬の時期は「収得賞金の加算」と「優先出走権」の獲得は、ものすごく重要なことになります。

 

競馬中継番組などで「賞金を加算したいです」といったコメントが聞こえてきたら、「収得賞金加算のことだ」と分かるようになると、より一層競馬が楽しく感じると思います。



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