【有馬記念1999】スペシャルウィーク対グラスワンダー!内国産馬対外国産馬の戦い

競馬に関する事

1999年・GⅠ有馬記念

“90年代最後”の有馬記念。

勝ったのは外国産馬のグラスワンダーだった。
鞍上を務めたのは、的場均騎手(現調教師)。

2着は、内国産馬だったスペシャルウィーク。
その鞍上は武豊騎手が務めた。

最終直線、標的にしていたグラスワンダーを猛追したスペシャルウィークだったが一歩及ばず、ハナ差の2着に敗れた。
ハナ差…その差は4センチと公表されている。

<勝利を確信した武豊騎手が、スペシャルウィークと共にウイニングランをしてしまう>という珍事が起こったことでも記憶されている。

グラスワンダーの的場均騎手は「追い込んできたスペシャルウィークの方が勢いがあったので、勝ったという自信がなかった」というコメントを残している。

グラスワンダーの記録とスペシャルウィークの記録

グラスワンダーは、前年の有馬記念に続き連覇達成と同時に、「有馬記念~宝塚記念~有馬記念」というグランプリレース3連覇(史上2頭目)を達成した。

※初の3連覇達成馬は1970年のスピードシンボリ。グラスワンダーは2頭目。そして、2021年のクロノジェネシスの3頭しかグランプリレース3連覇を達成していない※

その年の春秋天皇賞を勝利し、ジャパンカップで、当時の“世界最強馬”モンジューに打ち勝って有馬記念に挑んだスペシャルウィーク。
この有馬記念を勝てば「秋古馬三冠(あき・こばさんかん)」という記録を達成するところだったが、グラスワンダーに敗れたことで、惜しくもその記録を逃してしまう。

ちなみに、その翌年の2000年。前年はグラスワンダーの3着に入線したテイエムオペラオーが「秋古馬三冠」の偉業を達成するのだった。

スペシャルウィークはこのレースを最後に引退し、グラスワンダーは現役を続けたのだった。

内国産馬VS外国産馬と日本経済

この話の冒頭で、グラスワンダーが外国産馬であること、スペシャルウィークが内国産馬であることを強調したので、そのことについて触れていこうと思う。

1990年代後半は、内国産馬と外国産馬の間には大きな差があった。

<成長の早さと、スピードの質>が、内国産馬よりも外国産馬の方が優れていたと思う。

ある調教師は「日本の生産牧場の方たちは、もっと現実を見てほしい。世界で通用する馬を作らないと…。馬主さんとしては、馬がよく走れば良いのだから。そこに内国産も外国産もないのですから…。特定の馬主さんとだけ商売していると、日本のサラブレッドの質は向上しない」と言っていた。

ある馬主は「日本生産馬より完成されているのに外国産馬の方が安い」と言い、海外のサラブレッド・オークションに参加していた。

1999年当時、外国産馬はクラシック競走及び天皇賞に出走する権利がなかった。そんな環境だったが、「クラシック競走や天皇賞に出走できなくても良い。投資したお金を早く回収して、“GⅠオーナー”になりたい」と考える馬主がいても不思議ではない状況だった。

1980年代は1ドルが200円くらいだった。
年号が「平成」の1990年代になると「円高ドル安」が進み、1ドル120円くらいになっていた。

今まで10万ドルのサラブレッドを購入しようと思ったら、2000万円準備する必要があった。
しかし、1990年代の為替レートで考えると、10万ドルのサラブレッドが1200万円で購入できるのだ。

「海外で支払うことになる税金、日本への輸送代を考えても、外国産馬の方が安い」という声もあった。
安いうえに同じ歳の内国産馬よりも完成度が高いのなら、“わざわざ”海外でサラブレッドを購入することに合理性が出てくる。

「馬主さんは、馬がよく走れば良いのだから。そこに内国産も外国産もないのですから…」と危惧していた調教師の言葉は間違いではないだろう。

スペシャルウィーク対エルコンドルパサー&グラスワンダー

「外来種が在来種を絶滅させる」という噺はいくらでもある。

スペシャルウィークの父であるサンデーサイレンスはアメリカ産馬なので、スペシャルウィークが純粋な在来種でないことも分かっていたし、外国産馬にも“異国の地”で走ることにエピソードがあることも分かっていた。

それでも、スペシャルウィークには外来種であるグラスワンダーやエルコンドルパサーに勝ってほしかった。

現実は、スペシャルウィークの対エルコンドルパサー戦は0勝1敗で、対グラスワンダー戦は0勝2敗で幕を閉じた。

スペシャルウィークの4センチ…

セイウンスカイやキングヘイローと共に「クラシック3強」を形成し、エルコンドルパサーやグラスワンダーという外国産馬と共に「世代3強」と呼ばれ、常に世代の中心にいたスペシャルウィーク。

スペシャルウィークの血統、容姿、生い立ち…、そして主戦騎手の武豊騎手に、“ダービージョッキー”という栄光をもたらした事も魅力的だった。

 

グラスワンダーとスペシャルウィークのハナ差4センチと、ウオッカとダイワスカーレットのハナ差2センチは、今でも「同着にしてほしかった!」と思うGⅠ競走である。



人気ブログランキング

↑応援のクリックお願いします↑