“王道”を歩み日本ダービーを制覇したドウデュース。騎手と馬主の絆【競馬感想】

競馬感想

2022年5月29日の日曜日、東京競馬場では“東京優駿”、通称“日本ダービー”(GⅠ・芝2400m)が開催され、昨年の朝日杯フューチュリティ(GⅠ・阪神競馬場・芝1600m)の勝ち馬ドウデュースが勝利しました。

私の馬券の本命はドウデュースで、対抗はジオグリフ、三番手はアスクビクターモアでした。

馬券の本命であるドウデュースが勝ってくれた事は勿論嬉しいのですが、「50代になっても日本ダービーを勝てるチカラを持ってる」と証明してくれた武豊騎手の騎乗や言動に感動しました。

王道を歩み、経験を活かすドウデュース

皐月賞(GⅠ・中山競馬場・芝2000m)の勝ち馬ジオグリフ、同競走2着のイクイノックス、同3着のドウデュース、同4着のダノンベルーガの4頭が単勝オッズ6倍を切る人気で、「4強」という見方が強かった2022年の日本ダービー。

レース後の掲示板には、皐月賞の2着馬から5着馬と、青葉賞(GⅡ・東京競馬場・芝2400m)勝ち馬の5頭の馬番が点灯していました。
今年の日本ダービーも皐月賞組が強かった。

勝ちタイムは2分21秒9で、昨年のシャフリヤールが記録した2分22秒5を0秒6上回るダービーレコード更新となりました。

トライアル競走からGⅠ競走へ

ドウデュースは昨年9月の新馬戦でデビュー戦勝利を収めた後、オープン戦も勝ち連勝。年末の朝日杯FSで2歳王者になり、年明けは皐月賞のトライアル競走でもある弥生賞(GⅡ・中山競馬場・芝2000m)から始動し、皐月賞で善戦した後の日本ダービー制覇となります。

主戦騎手の騎乗都合やトレーニング環境の改善によって、オープンクラスになってからはGⅠ級の競走にだけ出走する競走馬が増えてきました。
そんな競走馬が増えてきた現代競馬において、素質馬でありながら、トライアル競走に出走し実戦で競馬を学び、その経験を次のレースで活かすドウデュースは稀な存在と言えます。

3歳牡馬が凱旋門賞へ出走予定という事への期待

2歳マイル王決定戦の朝日杯FSと、世代の頂点を決める日本ダービーを勝利したことで、現時点での世代代表馬はドウデュースと言っても過言ではないと考えています。

勝利ジョッキーインタビューを見聞きすると、今後は海外を視野に入れたローテーションになるようです。

もし凱旋門賞に挑戦するのであれば直行ではなく、これまでのようにトライアル競走を戦ってから挑んで欲しいと思います。

凱旋門賞(仏GⅠ・パリロンシャン競馬場・芝2400m)での斤量(ハンデ)は、年齢や性別によってかなり異なります。4歳以上の牡馬の斤量は59.5㎏で、牝馬の斤量は57㎏。3歳だと牡馬は56.5㎏で、牝馬は55㎏となります。

高い持久力を求められる欧州競馬の頂点といえるレースで、日本の競走馬が勝てるとしたら、このハンデ差を活用するのが勝利への近道だと考えられています。
ドウデュースと武豊騎手の今後に期待したいと思います。

武豊騎手、6度目の日本ダービー制覇

ドウデュースの鞍上は武豊騎手。
デビュー当初の新馬戦から日本ダービーまでの6戦全てで武豊騎手が手綱を握っております。

武豊騎手にとって、日本ダービー勝利は6度目となります。
初めての日本ダービー制覇は1998年。スペシャルウィークと共に勝ち取った栄光でした。

皐月賞馬のナリタタイシン、超良血馬のダンスインザダークで日本ダービーに挑みましたが、勝ちきるまでには至らず、「天才・武豊でも日本ダービーだけは勝てない」と競馬ファンの間で言われるようになっていました。

スペシャルウィークと日本ダービーを制した武豊騎手は、翌1999年の日本ダービーではアドマイヤベガに騎乗して、「日本ダービー連覇」という日本競馬界初の偉業を達成してしまいます。

日本ダービー3勝目は2002年。タニノギムレットと共に勝ち取りました。後にタニノギムレットの娘・ウオッカが日本ダービーを制覇することになります。

4勝目は“日本近代競馬の結晶”と言われる2005年のクラシック三冠馬・ディープインパクトと制覇。

5勝目は2013年。東日本大震災からの復興と重なる名を持つキズナと共に日本ダービーを制覇したのでした。キズナはディープインパクト産駒だったので、「同一騎手による父子でのダービー制覇」となったのでした。

そして今回のドウデュースで日本ダービー6勝目を記録します。

日本人騎手の「総大将」

20代の最期で“ダービージョッキー”の仲間入りを果たし、30代はクラシック三冠馬らと共にダービージョッキーになり、40代になってもダービージョッキー。そして今年、「50代でもダービーを勝てる騎手である」と証明してくれました。

凱旋門賞でエルコンドルパサーを破ってジャパンカップ(GⅠ・東京競馬場・芝2400m)に出走を決めたモンジューに対し、同馬を迎え撃つスペシャルウィークが「日本総大将」と言われました。
「日本総大将」という二つ名は、スペシャルウィークとその主戦騎手であった武豊騎手に相応しい名だと今でも思います。

株式会社キーファーズの代表・松島正昭氏は“武豊ファン”⁉

ドウデュースの馬主は株式会社キーファーズ。その代表は松島正昭氏。
キーファーズがJRAの馬主資格を取得したのは2015年。
馬主資格を取得してから7年、日本ダービー挑戦2回目で“ダービーオーナー”になった強運の持ち主です。

キーファーズの代表・松島正昭氏は「武豊騎手と凱旋門賞を勝ちたい」や「武豊騎手が引退したら馬主資格を返上する」などと公言するほどの“武豊ファン”

松島正昭氏は海外でも競走馬を所有しており、昨年のジャパンカップに参戦していたジャパンやブルームの共同馬主の一人でもあります。

強固な信頼関係を持つ馬主と騎手による日本ダービー制覇というのはドラマチックですね。

 

調べてみたところ、現在の松島正昭氏は、自動車ディーラーや飲食店などを運営する株式会社マツシマホールディングスの取締役会長を務めているそうです。

ちなみに、松島正昭氏の長女・松島悠衣は、クラブ法人の株式会社インゼルレーシングの代表を務めており、一口馬主クラブのインゼルを運営しています。

 

コロナ禍の東京競馬場に響いた“豊コール”

コロナ禍の現在、マスクを装着していても「声を出して応援すること」は禁止されています。

それでも、テレビ画面に映し出されていた東京競馬場の観客たちの中から“豊コール”が聞こえました。

観客の皆さんも「声を出して応援してはいけない」と分かっていたと思いますが、53歳となった天才騎手の偉業達成の瞬間を目撃したことによる感動を抑えることは出来なかったのでしょう。

今はただ、今年の秋に開催される凱旋門賞に、ドウデュースと武豊騎手が無事に出走できることを祈るばかりです。



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