武豊の勝ちへの執念がドウデュースに伝わった日本ダービー
当記事では敬称は省略しています。ご了承ください。
GⅠ・日本ダービー2022を振り返る
「武豊の想いがドウデュースに伝わった」
今年の日本ダービーで、一番最初にゴール板を駆け抜けた競走馬と騎手に対して、実況アナウンサーが放った一言だ。
駆け抜けた瞬間、鞍上の武豊は観客の方に向けて右手を挙げたのだった。
イクイノックスはクビ差の2着に敗れた。
鞍上のクリストフ・ルメールは、
「ドウデュースをマークして外に出た時には、“いける”と思ったけれど…。相手が凄く伸びた。イクイノックスも良い競馬をした。仕方ない」
とインタビューに応え、勝ったドウデュースを称賛し、激走してくれたパートナーにも気遣った。
たしかに、イクイノックスの上がり3ハロンタイムは、出走メンバーの中で最速の33秒6だった。
勝ったドウデュースよりも0秒1速かった。
ルメールがイクイノックスの力をきちんと引き出したことは間違いないだろう。
しかし、勝ったのはドウデュースと武豊だった。
ドウデュースと武豊の勝因は、イクイノックスとルメールよりも“人馬一体の走り”をしたことだと思う。
ドウデュースの馬主は株式会社キーファーズ。
その代表を務める松島正昭は「武豊ファン」を公言している。
馬主が信頼している騎手。
その騎手が自分の競走馬で日本ダービーを獲ったのだから、最高の気分だろう。
閑話休題。
コントレイルが勝った2年前は無観客。
シャフリヤールが勝った去年の観客は約5000人。
今年2022年も入場制限がある中で、6万2000人以上の競馬ファンが東京競馬場に訪れた。
ウイニングランを終え、検量室へと向かうために馬場から去ろうとするドウデュースと武豊。
そこで予想外の現象が起きた。
観客からの「“ユタカ”コール」だった。
感染症の影響を受ける前の競馬界では当たり前となっていた「ジョッキーコール」。
競馬を主催するJRAは、感染症対策として、観客に声を出すのは控えた応援を推奨していた。
「手拍子での応援するしかない」ということも観客は理解していたはずだ。
今回の日本ダービーでは、誰が最初に「“ユタカ”コール」をしたのかは分からない。
しかし、ドウデュースが第89回の日本ダービー馬となり、53歳で6度目の「ダービー騎手」となった武豊を見られたことへの感動が、観客の理性を抑えきれなくなったのだと思う。
このことに関して武豊は、
「あれはお客さんの心の声でしょうね。一昨年が無観客。去年も静かなダービーでした。こうやってファンに迎えて頂けるのは最高。一番の励みになりますね」
とインタビューで応えている。
今年の日本ダービーの勝ちタイムは2分21秒9。
去年の日本ダービー馬・シャフリヤールが記録したダービーレコード2分22秒5を0秒6更新する高速決着だった。
この激戦のあと、ドウデュースと武豊はフランスで開催される凱旋門賞に挑戦した。
イクイノックスはルメールと共に、古馬相手にGⅠ・秋の天皇賞を勝ちとった。
3着のアスクビクターモアは、GⅠ・菊花賞を勝ち“クラシック・ホース”となった。
4着のダノンベルーガも秋のGⅠ競走で好走している。
強力なライバルたちがいたから、名勝負になったのだろう。
「大きな感動の前では、人の感情を抑えることは難しい」ということを認識させられた日本ダービーだった。
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